Oh,boy!「コーヒーをめぐる冒険」
を、観てきました。
キネ旬シアター。
ゆったり座れて良かったのですが
パンフレットが売り切れ!
この映画、チラシもなくなっていたんです。人気なんですね〜。
物語は
主人公 ニコ
が、
早朝、恋人宅での気まずい会話の後、
引越したばかりのアパートへ戻る
ところから始まります。
漫然と遊びたいのではなく
なんとなく考えこみたくて
独りになりたいのだけれど
次々と邪魔に入られ
様々な出来事に遭遇するニコ。
それは
朝、一杯のコーヒーを飲み損ねたことに
寄るのか?
1台のトラムに乗り損ねたことに寄るのか?
全編モノクロなのと
音楽がイイ❗️
良くも悪くも
ベルリンの歴史を
感じざるを得ない。
こういうのって
Tokyo
では出来ないだろうなぁ
と思わされます。
監督はこれが
ドイツ映画テレビ・アカデミーの
卒業作品にして初監督作品。
そしてドイツ・アカデミー賞はじめ
数々の賞を受賞。
多分、
編集が軽快で
作品に力みがないのが
受け入れやすいのだと
思います。
そして
ラストシーンは
見る人によって
自由な解釈が出来る
主人公、ニコを演じる
トム・シリング
が好演。
熱くなれず
かといって
冷めたままでいいとも思っていない
もどかしさを感じながら
具体的な行動に出られない
若者のジレンマが
とても伝わってきました。
どちらかといえば。
気持ちがあまり落ち込んでいない
時に観た方が
ニッコリ笑顔で
映画館を後にできる気がします。
ベルリンの空気感が懐かしい方には
嬉しい作品です。
監督・脚本 ヤン・オーレ・ゲルスター
音楽 ザ・メジャー・マイナーズ
シェリリン・マクニール
原題 OH BOY
ドイツ/ドイツ語/85分/モノクロ
字幕 吉川美奈子
出演 トム・シリング
マルク・ホーゼン
フリデリーケ・ケンプター 他
(732日目)
読んで下さりありがとうございます。あなたにも一杯の珈琲みたいないい事がありますように☕️
以下、ネタバレになります。
免許の適性診断審査員
コーヒー店の女
怪しい上階の住人、
自称俳優のマッツェ
自宅で靴を売る若者
その若者のお婆さん
俗っぽいメロドラマの主演俳優
舞台をやってる昔の同級生ユリカと
その仲間
ユリカにからんでくるチンピラ(と言うのか、あれは)
ニコの父親と
その助手
電車の無賃乗車取締官
そして
バーのマスターと
常連客の老人
救急の病院の看護師
お婆さんと可動式チェアで
くつろぐくだりもかわいい。
ニコは優しいし
包んでくれる愛情に
懐かしさを感じているのかな、
とも思う。
もちろん一番好きなのは
バーのおじいさんのくだり。
最初は迷惑がっているのだけれど
仕方なく付き合い
やがて話に引き込まれ
特別な感情を抱く。
乾杯のとき
おじいさんが
「salute」
と、イタリア語を言ったのに
?と、首を傾げ
何処へ行っていたのか、尋ねるところ。
表情が段々と
優しくなっていくところ。
そして
おじいさんの
子供の頃の話。
なんとなく
昔、ポール・オースターの作品だったか、ハーベイ・カイテル主演のモノクロ映画で「スモーク」というのが
あったけれど
そのクリスマス・ストーリー
に、似たものを感じた。
でもね。
これは
コーヒーを飲み損なった
から始まった話ではなく
その朝、恋人の勧めるコーヒーを
ニコは飲まなかった。
自らの意思で断った。
そこから
来るべくして訪れた
モラトリアムの終結
のような気がする。
だって段々と
ニコはしっかり意思表示するのだもの。
無賃乗車だと問い詰められれば
違う、といって逃げる。
ユリカが危ないときは
止めに入って殴られる
ものの弾みでコトに至りそうになったときは寸前でやめよう、と言う。
(ま、結果罵られて退散するのだけど。
ちなみにニコの言った“komish”って、私もあまり好きじゃないことば。そんなこといわれたら、女の子は頭にくるよね。
ニコの気持ちも分かるけど。うん。ニコ、よく言ったわ。)
バーでは老人に「独りになりたいんです」と、ハッキリ言う。
(聞いてもらえないけど)
そして
救急で一夜を明かし
出てきた看護師に聞く。
その人の名前を。
「教えられないの」
と言われても
「ファストネームだけでも」
と、食い下がる。
ニコは
あの高圧的で自信家の父親から
ずっと意思表示の暇を与えられず
「自慢の一人息子」
を演じてきたんだろうなぁ。
そんな風に分析するのは
陳腐だけれど
誰もが
誰かに何かを言えずに
本当の自分を見失ってしまう
ってことが
あるんじゃないだろうか
自分を失うのも人の作用があるなら
自分を取り戻すのも人との交わりに寄るのかもしれない。
ドイツ人にとって
コーヒーは
特別な存在。
それは
苦くて
甘くて
人生のよう。
滑稽な位、色んなことの起きた
1日を経て
やっとありついた
モーニング・コーヒー
ニコはきっと
前進していく。
そうやって
人生は進む。