貴婦人とリルケと③ 「嗅覚」
「二枚目の壁掛けでは女が物思いに沈んでいるのを見て、僕たちは思わず足音を忍ばせて近づく。女は花輪を編んでいる、小さな円い花冠を。」
「一本の石竹を編み加えながら、」
「侍女のささげ持つ平盤から」
「つぎに編む石竹の色を考え深い目で選んでいる。」
「うしろのベンチにはバラをあふれるばかりに入れた籠が、手をつけられずに置かれていて、一匹の猿がそれを見つけ出している。」
「今は石竹を編むのであろう。獅子はもう興味を持たないが、」
「右の一角獣にはわかるらしい。」
(324日目)
抜粋は
「マルテの手記」
望月市恵 訳 岩波文庫 によります。