ターナー展 Ⅵ.色彩と雰囲気をめぐる実験
ターナーの制作に対する
飽くなき追求を
見ていくコーナー。
画家としての成功を
「徹底した勤勉」
と、述べたターナー。
膨大なスケッチブックや
未完の作品の中に
創作上の秘密や
制作方法をみることができます。
「カラー・ビギニング」(色彩のはじまり)
と呼ばれる習作群は
大胆な構図、
色、光、明暗と感情との相関関係の探究、
絵の具を拭き、擦り、洗うまでする素材との格闘など、
水彩の新しい可能性に挑戦する
ターナーの情熱が伝わります。
9点
69.ターナー愛用の金属製絵具箱
死後、発見されたもの。
使いやすいように工夫され、
使い込んで傷みも激しいです。
ターナーの好んだ顔料は
ウルトラマリン
ヴァーミリオン
クローム・イエロー
1840年に発明された
チューブ入りは
唯一、クローム・イエロー。
71.黄色い砂浜の上の青い月影
1824年頃
揺らめく月光の効果が
アニク城の夜景を描いた完成作に活かされた可能性があり
詩的な作品にも、徹底した自然観察に基づくことを示しています。
73.三つの海景
1827年頃
公開されることが稀なこの作品は
「カラー・ビギニング」の試みが
油彩にも持ち込まれた好例。
まるで抽象画の先駆けとも
いえる出来栄えです。
二つの海景に
逆さまから
もう一つ描いています。
逆さまで
見てみましょう。
このような試みを経て、
ターナーの制作方法は
オープン前日の
ヴァニッシング・デイに
会場で
最後のひと筆を加えて完成する
というスタイルが定着していきます。
※会場内の写真は、主催者の許可を得て撮影したものです。
※文中の説明は、ターナー展図録(Tate 2013-14 朝日新聞社2013-14発行)
によります。
(473日目)