「こども展」その③-2
6/29(日)まで開催中
こども展
名画にみるこどもと画家の絆
印象的だった作品を
ピックアップしています。
作品名・作家名・製作年・所属
の順に記します。
第2章 模範的な子どもたち
つづきです。
「身だしなみ」
ウジェーヌ・デュレンヌ
1901年 グラース国際香水博物館(オルセー美術館より寄託)
ウジェーヌ・デュレンヌは
印象派の影響を受け、
とりわけ晩年のピサロと
親交を深めました。
速記者、代議士を経て
画家になったのは35歳のとき。
この絵は画家になって6年目、
ルールに定住した年に
娘、マチルダが7歳の頃を
描いています。
国立、地方問わず
多くのサロンに出品した画家は
住んだ土地も多く、
ルールから更に
北部ラン県
その後、南部のタルン県ドゥルニュ
と、移り住みました。
この絵は見た瞬間から好き!になりました。画家が、ピサロと親しかったと知り、納得です。
小さな肩が、
一人前のことをこなそうと
一所懸命な様子が
なんともいじらしいです。
親子しか捉えられない
日常の瞬間
親子ならではの
成長を感じる喜び
センスの良い室内の風景と
柔らかな色調とがあいまって
見る人の心を温かくします。
「娘、あるいはS嬢の肖像」
アンリ・デティエンヌ
1913年 オルセー美術館
アンリ・デティエンヌは
肖像画で大成功をおさめた画家。
植民地省専属画家として
南方から帰ると
ブルターニュを定期的に
訪れたそうです。
1930年代には
エジプトでフランス絵画の講演も
行っています。
娘のシュザンヌは度々
モデルになりました。
5歳の娘を気遣ってか、
顔は丁寧に描かれているのに
足元や
椅子などは
手早く描かれたように見受けられます
「室内の子どもと女性」
ポール・マテイ
1890年 オルセー美術館
ポール・マテイは
サンサーンスやドガなど
親しい友人を多く描きました。
絵画、素描、版画のコレクターでもあり、レンブラントの版画を200点ほど所有していたそうです。
ここに描かれた息子、ジャックは
父と同じ画家、そして美術史家となりました。
「画家の姪、マドレーヌ・ルモワールの肖像(14ヶ月)」
シャルル・リュシアン・レアンドル
1902年 ランス美術館
シャルル・リュシアンは
スタンラン、フォランと並ぶ
フランス世紀末の代表的な風刺画家。
モンマルトルを拠点にし、
ロートレックやプルボらと
親交がありました。
自身は生涯独身で
母と妹、その子供たちに
深い愛情を注いだそうです。
この絵は
画家が得意としたパステルで
描かれています。
「ヌムールの寄宿舎」
ベルナール・ブーテ・ド・モンヴェル
1909年 ブーローニュ=ビヤンクール、
1930年代美術館
画家の父、ルイ=モーリスは
児童向け小説の挿絵画家として
名声を得ていました。
息子、ベルナールは
版画家としてデビュー後、
フランス アール・デコ絵画の代表に
数えられています。
若い時からフランスと主にアメリカで
高く評価されました。
1949年、68歳の年、
飛行機事故で亡くなりました。
同乗者にヴァイオリニストのジネット・ヌヴー、エディット・ピアフの愛人として知られるプロボクサー、マルセル・セルダンがいました。
「教室にて、子どもたちの学習」
アンリ・ジュール・ジャン・ジョフロワ
1889年 パリ、フランス国民教育省
子どもの教育を主題にした絵画は
教育先進国のオランダで17世紀頃から
見られるようになり、
その影響でフランスでは
18世紀から
シャルダンやフラゴナールなどが
描き始めています。
19世紀に入り、
フランス第三共和制時代に
政治家ジュール・フェリーによって
教育の機会均等が図られ
初等教育の義務化、無料化が
実現へと至ります。
ジョフロワの絵は
そうした時代の流れを
如実に映すものとなりました。
21歳でサロンに初入選を果たし、
翌年にはレジオン・ドヌールを受勲した
才能溢れる画家は
小学校の2階の教師夫妻に間借りしたことがあり、
子どもたちをつぶさに観察出来ました。
同時代の画家が
ブルジョワを描いたのに対し
あくまで庶民の子どもたちを
温かな目線で描き続けました。
「(金持ちの子どもが集う)モンソー公園に子どもはいない。いるのは小さな大人ばかりだ」
本当に子供の表情が良く捉えられ
1人1人が生き生きとしていて
見ていて飽きることがありません。
かなり大きなこの絵の前にたつと
自分も教室にいるような気になります。
ヒソヒソおしゃべりや
ブツブツ独り言、
カリリとペンの走る音
澄んだ声で優しく説明する
先生は
厳しい環境にも凛と咲く
リンドウのよう
画面右端
立って本を読む男の子は
先生の補佐として
他の生徒の質問を受けるために
教室を歩いているそうです。
(130日目)
※会場内の写真は美術館より特別に許可を得て撮影したものです。
画像及び解説は
本展カタログによります。
監修 千足伸行
執筆 エマニュエル・ブレオン
千足伸行
ミシェル・オルン(オランジュリー美術館)
クリスティーヌ・ボレル(オランジュリー美術館)
翻訳 太田雅子
谷川かおる
野口沢子
花岡敬造
フランス語校正 花岡敬造
制作・デザイン 美術出版社
印刷 大日本印刷
編集・発行 日本テレビ放送網 ©2014
東京都港区東新橋1-6-1